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空家相談連携法人

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解決事例

Solution Examples

アメリカと日本をつなぎ、空き家問題を解決した完全非対面の売却・登記実務

海外に住む相続人が日本の不動産を相続した場合、手続きは想像以上に複雑になりやすく、思うように進まないケースが少なくありません。日本と海外では距離が離れているため、現地に来て手続きを行うことが難しいだけでなく、本人確認の方法、必要書類の取得、売買代金の送金方法など、いくつもの課題が重なります。特に不動産の相続や売却は、登記、契約、税務、決済といった複数の手続きが関わるため、どれか一つでも進め方を誤ると、全体が止まってしまうことがあります。

さらに、海外在住者の場合は、日本国内では一般的な進め方がそのまま通用しない場面も多くあります。印鑑証明書や住民票による本人確認が難しい、領事館での手続きに時間がかかる、国際送金では着金までにタイムラグが生じるなど、国内案件とは異なる壁に直面しやすいのが実情です。こうした案件では、制度を理解したうえで状況に応じた方法を組み立て、関係者が連携しながら進めていくことが重要になります。

本事例では、距離や制度の違いといった課題がありながらも、必要な確認と調整を重ねることで、非対面での売却手続きまで無事に完了することができました。

1. 事案の背景

米国在住の相続人と日本の空き家

今回のケースでは、日本の空き家を相続したものの、相続人がアメリカ(ロサンゼルス)在住であるため、手続きが進められない状況でした。

登場人物

  • 被相続人A:日本在住・不動産所有者(死亡)
  • 相続人B:米国ロサンゼルス在住
  • 買主法人C:日本の不動産業者

相続人は日本に来ることができず、「どうしていいか途方に暮れていた」という状態でした。

ミッション:被相続人名義の不動産を相続登記し、直ちに売却する

2. 直面した3つの壁

① 本人確認の壁

  • 印鑑証明書がない
  • 住民票も除票済み

日本国内の不動産手続きでは、印鑑証明書や住民票などをもとに本人確認を行う場面が多くあります。しかし今回は、そうした日本で一般的な確認書類をそのまま用意することができず、通常どおりの本人確認では進められないという問題がありました。

② 物理的距離の壁

  • 領事館が遠い
  • 予約が困難
  • 対面不可

海外在住の場合、日本の制度で想定されている対面での確認や手続きをそのまま行うことが難しいケースがあります。今回も、領事館までの距離や予約の取りづらさが大きな負担となり、必要な手続きを現地ですぐに進められない状況でした。

③ 同時履行の壁

  • 海外送金に時間がかかる
  • 当日決済と登記が難しい

日本国内の不動産取引では、売買代金の支払いと登記申請を同じタイミングで行う進め方が一般的です。しかし今回は海外送金が前提となるため、送金手続きが完了しても着金までに時間差が生じやすく、通常の同時決済・同時登記をそのまま成立させることが難しい状況でした。

3. 解決策① 公証人の活用

本人確認の問題に対しては、アメリカで利用できる公的な認証手続き(米国の公証人制度/Notary Public)を活用しました。日本で一般的に使われる印鑑証明書や住民票を用意することが難しかったため、本人が手続きを行っていることや現在の住所を確認できる書類を現地で作成し、認証を受ける方法を取りました。この書類は宣誓供述書(Affidavit)と呼ばれるもので、本人確認や住所確認に必要な書類として対応しました。

対応内容

  • 本人確認や住所確認のための書類(宣誓供述書)を作成
  • 米国内の公証人にその場で認証してもらう
  • 日本の印鑑証明書や住民票の代わりとなる資料として活用

これにより領事館まで行く必要がなく、現地で手続きを完結しました。

4. 解決策② Zoomによる本人確認

Zoom面談

カメラ越しにパスポートと本人を照合し、本人確認を実施しました。書類だけでは確認しきれない部分も、実際に顔を合わせてやり取りすることで補い、非対面でも安心して進められるようにしました。

意思確認

  • 売却の意思があるか
  • 売却条件に問題がないか
  • 解体などの前提条件をどう考えているか

こうした内容を口頭で一つずつ確認し、手続きの進め方に認識のずれが出ないよう整理しました。

信頼構築

海外在住の依頼者にとっては、相手の顔が見えないまま手続きを進めることに不安を感じやすいものです。そこで、時差にも配慮しながら丁寧に説明と確認を重ねることで、非対面でも安心して相談・手続きを進められる環境を整えました。

5. 解決策③ 同時履行の工夫

同時履行を実現するための進め方

1.事前合意

まず、海外送金では国内振込のように当日中の着金確認が難しいことを前提に、着金前でも登記申請を進める進行方法について関係者間で事前に合意しました。通常の国内案件とは異なる進め方となるため、あらかじめ認識をそろえておくことが重要でした。

2.送金実行

次に、買主側に売買代金の海外送金手続きを行ってもらいました。今回の案件では、海外送金の方法としてSWIFT(スイフト)[※1]を利用して進めました。

3.エビデンス提示

その後、送金手続きが完了したことを示す資料や振込控えを関係者間で共有し、送金が確かに実行されたことを確認しました。着金前であっても、送金の事実を客観的に確認できる状態を整えることで、次の手続きへ進めるようにしました。

4.登記申請

最後に、共有された送金証憑と事前合意の内容をもとに登記申請へ進みました。今回は、「送金手続き完了」をもって決済に準じるものとみなす柔軟な進め方を取ることで、着金を待たずに手続きを進め、同時履行を実現しました。

[※1] SWIFT(スイフト)について

今回の案件では、売買代金の送金にSWIFT(スイフト)※1という国際送金の仕組みを利用しました。海外送金は、日本国内の通常の銀行振込とは異なり、送金先の国や銀行の条件によっては、複数の銀行を経由して資金が移動します。

本件でも、送金は次のような流れで処理されました。

武蔵野銀行 Musashino Bank
三菱UFJ銀行 MUFG Bank
モルガン・スタンレー銀行 Morgan Stanley Bank
米国シティバンク Citibank (US)

このように中継銀行を経由することで、送金手続きが完了しても、実際の着金までには一定の時間差が生じます。そのため、日本国内の不動産取引で一般的な「当日送金・当日着金・同時決済」という進め方が難しい状況でした。

海外送金では、送金元の銀行と受取銀行のあいだに中継銀行が入ることもあり、その分、国内送金よりも着金までに時間がかかる場合があります。一方で、SWIFT(スイフト)※1のような国際送金の仕組みを利用することで、海外に居住していても銀行間で安全かつ正確に送金情報をやり取りできるため、本件でも非対面での取引を進めるうえで重要な役割を果たしました。

SWIFT(スイフト)とは、世界中の銀行同士が送金情報をやり取りするための国際的な通信ネットワークです。銀行ごとに割り当てられたコードをもとに送金先を特定し、安全かつ正確に海外送金を行うために使われています。海外の銀行口座宛てでも送金先を正確に特定しながら手続きを進められる仕組みであり、本件でも非対面での決済を実現するための方法として採用しました。

6. 依頼者の声

今回の案件では、依頼者が海外に住んでおり、日本に入国できない状況が続いていたため、通常の不動産売却以上に大きな不安を抱えていました。相続登記や売却手続きは、日本国内でも複数の確認や調整が必要になりますが、海外在住の場合は、距離や時差、本人確認の方法、送金手続きなどの問題が重なり、さらに不安が大きくなりやすい状況でした。

そのような中で重要になったのが、状況を一つずつ整理しながら、依頼者と継続的にコミュニケーションを取ることでした。メールやZoomを通じて、現在どの段階にあるのか、どのような手続きが必要なのか、どこに注意すべきなのかを丁寧に共有しながら進めることで、非対面でも安心して判断できる環境を整えていきました。

依頼者からのコメント

  • 「日本に入国できず、どうしていいか途方に暮れていました。」
  • 「Zoomでの説明を希望します。夜間でも対応可能です。」
  • 「入金を確認しました。非常に助かりました。ありがとうございます。」

このようなやり取りからもわかるように、海外在住者の不動産案件では、単に手続きを進めるだけでなく、不安を減らしながら、状況を見える形で共有していく対応が重要になります。今回も、法務・決済・連絡調整を含めて全体を整理しながら進めたことで、依頼者にとっても納得感のある形で解決までつなげることができました。

適切なコミュニケーションと実務面での支援を重ねることが、非対面取引の信頼を生み、解決へ進める土台になりました。

7. 成功のポイント

本件を解決まで進めることができた背景には、単に一つの手続きを進めただけではなく、法務対応・コミュニケーション・関係者間の連携を並行して組み立てられたことがありました。海外在住者による不動産売却では、本人確認、意思確認、決済、登記など、複数の要素が同時に関わるため、どれか一つだけでは解決に至りません。

今回は、現地の制度を踏まえた柔軟な法務対応に加え、Zoomやメールを活用した非対面での確認、さらに関係者間で進め方の認識をそろえながら実務を進めたことで、全体を止めずに解決へつなげることができました。こうした複数の要素を整理し、同時に進められたことが、本件の大きな成功要因となりました。

成功要因の整理

  • 法務対応:Affidavitの活用
  • IT活用:Zoom・メール
  • 連携:信頼ベースの決済

たとえば法務面では、日本国内の一般的な書類だけでは対応が難しい状況に対し、現地で利用できる手続きを活用して本人確認や住所確認を補いました。IT面では、Zoomやメールを使うことで、距離や時差があっても意思確認や説明の機会を確保し、依頼者の不安を減らしながら進めることができました。さらに、決済面では、送金証憑の共有と事前合意をもとに、着金を待たずに次の手続きへ進める体制を整えることで、海外送金のタイムラグにも対応しました。

このように、一つの専門分野だけで解決するのではなく、必要な対応を組み合わせながら全体を前に進めたことが、本件を成功へ導いたポイントでした。海外在住者が関わる空き家問題であっても、状況に応じた方法を選び、関係者が連携しながら進めることで、解決までつなげることが可能になります。

8. まとめ

海外在住者が関わる不動産案件は、本人確認、必要書類、国際送金、登記手続きなど、国内案件にはない課題が重なりやすく、思うように進まないことがあります。しかし本件では、状況に応じた法務対応、デジタルツールの活用、関係者間の連携を重ねることで、非対面でも売却手続きまで無事に完了することができました。

海外在住者の不動産案件も、決して「解決不能」ではありません。

大切なのは、制度の違いを正しく理解し、状況に合った方法を組み立てながら、一つずつ手続きを整理して進めることです。日本に来ることが難しい状況であっても、必要な対応を見極め、関係者と連携しながら進めることで、解決へつなげることは十分に可能です。

空対協でも、こうした複雑な事情を抱えた案件に対し、状況整理から実務対応までを見据えながら、解決に向けた進め方を組み立てています。空き家の相続や売却で進め方に迷われている場合は、早めに状況を整理することが、解決への第一歩になります。

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